あすの便が大雨の予報でも、飛行機はたいてい飛びます。
飛行機がどのくらいの雨で欠航するのかを調べると、そもそも雨量では決まっていませんでした。国土交通省が公表している2024年度のデータでは、天候による欠航5,972便のうち2,877便が8月に集中しています。全体の48.2%です。いっぽう梅雨の6月は199便しかありませんでした。
この記事では、実際に何で決まっているのかを数字で示します。そのうえで、自分の便が飛ぶかどうかを出発前に確かめる方法までまとめました。
この記事でわかること
- 飛行機はどのくらいの雨で欠航するのか(結論は雨量では決まらない)
- 欠航を決めている本当の数字は視程と横風。その目安は気象庁が公表している
- 同じ雨でも空港によって降りられるかが変わる理由
- 欠航が決まる前に手数料なしで予約を変える方法(JAL・ANA・スカイマークの違い)
天候から調べる
雨で欠航するのかを国土交通省の実績で調べられます
大雨、台風、雪、強風、霧、雷のそれぞれについて、実際にどれくらい欠航しているかをまとめています。空港50か所の月ごとの天気も引けます。
飛行機はどのくらいの雨で欠航する?結論は雨量では決まらない

まず実際の数字を見ます。国土交通省は航空会社10社の欠航便を、理由ごとに毎月公表しています。2024年度の1年分を数えると次のようになりました。
| 欠航の理由 | 便数 | 割合 |
|---|---|---|
| 天候 | 5,972便 | 58.4% |
| 機材繰り(前の便の遅れが次の便に及ぶ) | 2,781便 | 27.2% |
| その他 | 910便 | 8.9% |
| 機材故障 | 567便 | 5.5% |
| 合計 | 10,230便 | 100% |
国土交通省「航空輸送サービスに係る情報公開(令和6年度第4回)」の2024年度実績から集計。対象は全日本空輸・日本航空・日本トランスオーシャン航空・スカイマーク・AIRDO・ソラシドエア・スターフライヤー・Peach・ジェットスター・ジャパン・スプリング・ジャパンの10社。
欠航の理由でいちばん多いのは天候です。ここまでは想像どおりだと思います。
ところがその天候欠航を月ごとに分けると、雨の多い月ほど欠航が少ないという結果になりました。
| 月 | 天候による欠航 | 東京の降水量(平年値) |
|---|---|---|
| 8月 | 2,877便 | 154.7mm |
| 2月 | 805便 | 56.5mm |
| 3月 | 379便 | 116.0mm |
| 7月 | 371便 | 156.2mm |
| 1月 | 262便 | 59.7mm |
| 4月 | 259便 | 133.7mm |
| 5月 | 219便 | 139.7mm |
| 9月 | 210便 | 224.9mm |
| 6月(梅雨) | 199便 | 167.8mm |
| 12月 | 164便 | 57.9mm |
| 10月 | 137便 | 234.8mm |
| 11月 | 90便 | 96.3mm |
欠航便数は国土交通省の2024年度実績(10社計)。降水量は気象庁の東京の月別平年値(1991〜2020年)。
東京で雨がいちばん多いのは10月の234.8mmです。その10月の天候欠航は137便で、1年で2番目に少ない月でした。次に雨が多い9月も210便です。
反対に、雨がいちばん少ない2月に805便が欠航しています。こちらは雪です。
そして8月の2,877便は台風によるものです。8月だけで1年の天候欠航の48.2%を占めていました。梅雨の6月と比べると14.5倍です。
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飛行機の欠航を決めているのは雨量ではなく視程
雨そのものは飛行機を止めません。止めるのは雨で見えなくなることです。
着陸できるかどうかは、滑走路がどこまで見えるかで決まります。この見える距離を視程(滑走路視距離・RVR)と呼び、数値で基準が決まっています。
| 着陸方式 | 必要な見通し(RVR) | 決心高 | 降りられる目安 |
|---|---|---|---|
| カテゴリーⅠ | 550m以上 | 60m(200フィート)以上 | ほとんどの空港がこの条件 |
| カテゴリーⅡ | 300m以上 | 30m(100フィート)以上 | 設備がある空港のみ |
| カテゴリーⅢa | 175m以上 | — | 自動操縦で着陸 |
| カテゴリーⅢb | 50m以上175m未満 | — | 自動操縦で着陸 |
国土交通省の資料をもとに作成。決心高とは、その高さで滑走路や灯火が見えなければ着陸をやめて上昇し直す高さのこと。
ふつうの空港はカテゴリーⅠです。つまり滑走路が550m先まで見えていれば降りられます。550m見えなくなるほどの雨は、そう多くありません。
何ミリの雨で視界が悪くなる?気象庁の区分で見る
気象庁は雨の強さを1時間あたりの雨量で区分しています。見え方についても書かれています。
| 1時間の雨量 | 呼び方 | 外の様子 |
|---|---|---|
| 10〜20mm | やや強い雨 | 地面一面に水たまりができる |
| 20〜30mm | 強い雨 | 道路が川のようになる |
| 30〜50mm | 激しい雨 | 道路が川のようになる |
| 50〜80mm | 非常に激しい雨 | 水しぶきであたり一面が白っぽくなり視界が悪くなる |
| 80mm以上 | 猛烈な雨 | 息苦しくなるような圧迫感がある |
気象庁「雨の強さと降り方」より。
気象庁が視界の悪さに触れているのは1時間50mmからです。
天気予報で1時間50mm以上の雨が出ているなら、運航への影響を気にする意味があります。20mmや30mmの雨で不安になる必要はありません。
運航の目安は気象庁が色分けで公表している
航空会社は「風速何メートルで欠航」という自社の基準を公表していません。機種と滑走路の状態で変わるためです。
ただし気象庁は空港ごとの予報で、運航に注意が要る値を色分けして出しています。これが実質的な目安になります。
| 色 | 風 | 視程 | 雲底の高さ |
|---|---|---|---|
| 色なし(白) | 24ノット以下 (約12m/秒まで) |
3,200m以上 | 1,000フィート以上 |
| 黄色 | 25〜33ノット (約13〜17m/秒) |
1,000〜3,100m | 200〜900フィート |
| ピンク | 34ノット以上 (約17m/秒以上) |
900m以下 | 100フィート以下 |
気象庁の飛行場時系列予報の凡例より。ノットは1時間に進む海里で、1ノットは約0.51m/秒。
白なら気にしなくていい範囲です。黄色が出たら遅れる可能性があります。ピンクが出ている時間帯は、着陸できずに引き返すことが起こりえます。
雨に関係するのは真ん中の視程です。3,200m以上あれば色は付きません。
自分の便が飛ぶか確かめる方法|飛行場時系列予報の見方
この色分けは誰でも見られます。気象庁が空港ごとに出している飛行場時系列予報です。
下は2026年9月9日の朝に出された羽田空港の予報です。実際の画面をそのまま載せます。

羽田空港(RJTT)の飛行場時系列予報。気象庁 東京航空地方気象台より。時刻はすべて世界時で、日本時間は9時間足したものになります。
この日は色が付いていました。順番に見ていきます。
- Visibility(視程)… ふだんは9,999mですが、右端の時間帯で8,000mまで下がっています。さらにTempoの行に3,000m(黄色)とあります。一時的に3,200mを切る見込みという意味です。
- Cross(横風の成分)… 15から22ノットで推移し、最後に25ノット(黄色)まで上がります。その下のGustは35ノット(ピンク)です。突風が34ノットを超える見込みということになります。
- Weather(天気)… SHRAはにわか雨、TSRAは雷雨です。頭の「−」は弱いという意味になります。この日は弱いにわか雨のあと、一時的に雷雨の予報でした。
- TS probability(雷の確率)… 右端がB(黄色)です。雷の可能性が高い時間帯を表します。
つまりこの日の羽田は、朝のうちは問題なく、日本時間の15時ごろに視程・突風・雷の3つが重なる見込みでした。
この時間に予約が入っているなら、遅れる可能性を見ておく意味があります。反対に、色の付いていない時間帯なら気にする必要はありません。
行き先の空港の予報も同じように見られます。その空港を受け持つ航空地方気象台のページか、気象庁の航空気象情報から探してください。
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同じ雨でも空港によって欠航するかが変わる
ここがあまり知られていない点です。視程が下がったときに降りられるかどうかは、空港の設備で変わります。
カテゴリーⅡやⅢの設備がある空港は、視程が550m以下でも降りられます。国土交通省の資料(平成26年4月1日現在)では、実施している滑走路は次のとおりです。
| 区分 | 実施している滑走路 |
|---|---|
| カテゴリーⅡ (300mまで) |
東京(羽田)34R、中部18、関西06L・06R・24R・24L |
| カテゴリーⅢb (50mまで) |
新千歳19R、釧路17、青森24、成田16R、中部36、広島10、熊本07 |
国土交通省の資料より。カテゴリーⅢbは全国で7本の滑走路のみ。
行き先がこの一覧に無い空港なら、視程が550mを切った時点で降りられません。
同じ日の同じ雨でも、羽田行きは降りられて地方空港行きは引き返す。こういうことが起きるのはこのためです。
飛行機の欠航率は年間どのくらい?
国土交通省の最新の公表では、10社全体の欠航率は次のようになっています。
| 時期 | 欠航率 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 2025年4〜6月 | 0.64% | 0.90% |
| 2025年7〜9月 | 1.19% | 2.36% |
| 2026年1〜3月 | 1.77% | 1.36% |
国土交通省「航空輸送サービスに係る情報公開」より。
天候が理由の欠航は月でどれだけ変わるか
同じ国土交通省の公表を月ごとに並べ直すと、雨の季節より冬のほうがはるかに止まっています。2025年度に大手10社が欠航したのは9,293便で、そのうち天候が理由のものは4,301便でした。
| 月 | 天候が理由の欠航 | 多い順 |
|---|---|---|
| 1月 | 963便 | 1番目 |
| 12月 | 820便 | 2番目 |
| 2月 | 639便 | 3番目 |
| 7月 | 470便 | 4番目 |
| 8月 | 253便 | 5番目 |
| 5月 | 236便 | 6番目 |
| 3月 | 220便 | 7番目 |
| 9月 | 194便 | 8番目 |
| 11月 | 164便 | 9番目 |
| 6月 | 149便 | 10番目 |
| 4月 | 140便 | 11番目 |
| 10月 | 53便 | 12番目 |
国土交通省「航空輸送サービスに係る情報公開」(2025年度・大手10社)を月ごとに集計。
梅雨で雨がいちばん多い6月は149便で、1年のうち少ないほうから3番目でした。上に並ぶのは12月と1月と2月です。この3か月だけで年間の56%を占めます。飛行機を止めているのは雨ではなく雪と台風だという結果になります。
1月の963便は6月の6.5倍です。雨の予報を見て心配するより、冬に飛ぶときのほうが備えが要ります。
いちばん高い時期でも100便に2便ほどです。しかもその大半は台風と雪によるものです。
欠航が決まる前に手数料なしで変更・払い戻しできる
ここがいちばん実用的なところです。3社とも、欠航が決まる前の段階で手数料なしの変更と払い戻しを受け付けています。実際の運航状況は関係ありません。
| JAL | ANA | スカイマーク | |
|---|---|---|---|
| 欠航前でも手数料なし | できる | できる | できる |
| 対象かどうかの見分け方 | 発着案内の便名の横に「*」か「!」が付く | 対象空港が公表される | 天候調査や引き返しの可能性がある便 |
| 変更の締切 | ウェブで手続き | 出発20分前まで | 出発予定日から10日以内なら出発後も可 |
| 払い戻しの期限 | ウェブまたは専用フォーム | 旅行開始日から1年と30日以内 | 出発予定日から10日以内 |
| 他社便への振替 | — | ANA便への変更 | できない |
| 遅延が対象になる条件 | — | — | 60分以上の遅延から |
| 宿泊費・交通費 | — | 自己負担 | — |
各社の公式ページより(2026年9月時点)。「—」はそのページに記載が無かった項目。
覚えておきたいのは3つです。
- 欠航の発表を待たなくていい。影響が見込まれる段階で手続きできます。
- JALは記号で見分けられる。発着案内で便名の横に「*」か「!」が付いていれば対象です。
- スカイマークは他社便へ振り替えられない。その日のうちに着きたいなら、自分で別の手段を確保する必要があります。
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払い戻しの窓口は、航空券を買った場所になります。比較サイトで買っていると、航空会社ではなくそのサイトとやりとりすることになり、空港のカウンターでは予約を触れないことがあります。台風や雪の季節に飛ぶなら、この点も見ておいてください。
比較サイトごとの手数料と払い戻しの条件を調べた記事
代わりの便を自分で探すなら、比較サイトで空席をまとめて見られます
当日の運航状況を確認する3つの方法

空港へ向かう前に見るものは3つで足ります。
- 航空会社の発着案内。便名で検索すると、その便の状況が出ます。JALはここに「*」や「!」が付いていれば手数料なしの対象です。
- 航空会社のアプリの通知。予約番号を登録しておくと、欠航や遅れが決まった時点で届きます。スカイマークはメールアドレスの登録で同じ知らせが届きます。
- 気象庁の飛行場時系列予報。前の章で見た画面です。航空会社より早く、その空港が荒れるかどうかが分かります。
空港のモニターは着いてからしか見られません。家を出る前に決めたいなら、上の3つが早いです。
飛行機が欠航したときにやること

手続きには期限があります。先に動くほど選べる便が多く残ります。
- まず航空会社のウェブで振替か払い戻しを選ぶ。カウンターに並ぶ前にスマートフォンで終わることが多いです。
- その日のうちに着きたいなら別の便を先に押さえる。スカイマークは他社便への振替をしていません。自分で取る必要があります。
- 鉄道やバスも見る。台風のときは飛行機だけでなく鉄道も止まります。両方の状況を見てから決めます。
- 泊まる場合の費用は自分持ちになる。ANAは宿泊費と交通費をお客様負担と明記しています。天候による欠航は航空会社の責任ではないためです。
- 旅行保険に入っているなら確認する。欠航による宿泊費が対象になる保険があります。
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雷が鳴っていても飛行機は飛ぶ?

飛行機自体は落雷に耐える造りになっています。機体の表面を電流が流れて外へ抜けるようにできているためです。
止まるのはむしろ地上の作業です。空港の周辺で雷が観測されると、屋外での荷物の積み下ろしや給油をいったん止めます。作業する人の安全のためです。
その結果として出発が遅れ、遅れが重なると次の便にも及びます。国土交通省のデータで欠航理由の27.2%を占めていた機材繰りは、こうして起きます。
飛行場時系列予報にはTS probability(雷の確率)の行があります。ここがAやBになっている時間帯は、地上の作業が止まる可能性があります。
雨の日の飛行機は揺れる?
雨そのものが揺れを起こすわけではありません。揺れるのは空気の流れが乱れているときで、雨を降らせる雲の中や周りではそれが起きやすくなります。
揺れが気になるなら座る場所で変わります。主翼の上あたりが最も揺れにくい席です。機体の重心に近く、上下の振れ幅が小さくなります。逆にいちばん後ろの席は振れ幅が大きくなります。
飛行機と雨のよくある質問
Q. 1時間何ミリの雨から欠航しますか。
A. 雨量だけで決まる基準はありません。影響が出るのは視程が下がったときです。気象庁が視界の悪化に触れているのは1時間50mm以上の雨からで、運航の目安として色が付くのは視程3,200mを下回ったときです。
Q. 大雨警報が出ていても飛びますか。
A. 飛ぶことが多いです。大雨警報は地上の災害に対する警報で、離着陸の可否とは別に判断されます。
Q. 欠航が決まるのはいつですか。
A. 台風のように前もって分かるものは前日に決まることがあります。当日の天気で変わる場合は出発の直前まで決まりません。ただし3社とも、決まる前の段階で手数料なしの変更を受け付けています。
Q. 目的地の天気が悪いと聞きました。飛んでも引き返すことはありますか。
A. あります。着陸できるか分からないまま出発することを条件付き運航といい、降りられなければ出発地へ戻るか別の空港へ降ります。搭乗前に案内があります。
Q. 欠航になったら宿泊費は出ますか。
A. 天候による欠航では出ません。ANAは公式ページで交通費と宿泊費をお客様負担と明記しています。
Q. 飛行機と新幹線ならどちらが雨に強いですか。
A. 雨に限れば飛行機のほうが止まりにくいです。鉄道は一定の雨量で運転を見合わせる基準を持っていますが、飛行機に雨量の基準はありません。
欠航の起きやすさは、次の記事で国土交通省の数字を並べてさらに詳しく見ている。
- 月ごとの欠航率 … 「飛行機の欠航が多い月は何月?10社の欠航率と月ごとの違いを比べた」
- 航空会社ごとの欠航率 … 「欠航しにくい航空会社は?10社の欠航率0%と2.32%の差」
- 台風の時期の欠航 … 「飛行機は台風でどれくらい欠航する?月別データと10社の違い」
まとめ|飛行機はどのくらいの雨で欠航するのか
- 雨量では決まらない。2024年度の天候欠航5,972便のうち48.2%が8月の台風によるもので、梅雨の6月は199便だった
- 東京で雨がいちばん多い10月の天候欠航は137便で、1年で2番目に少なかった
- 決めているのは視程。ふつうの空港は滑走路が550m先まで見えれば降りられる
- 気象庁の目安では、視程3,200m以上で色が付かない。1,000mを切ると注意、900m以下で厳しくなる
- 視程が下がっても降りられる設備があるのは限られた滑走路だけ。行き先によって結果が変わる
- JAL・ANA・スカイマークとも、欠航が決まる前に手数料なしで変更や払い戻しができる
雨の予報が出ていても、まず飛びます。心配なら空港へ向かう前に飛行場時系列予報を1回見てください。
色が付いていなければ、その日はふだんどおりです。






